大阪地方裁判所 昭和36年(ワ)867号 判決 1963年1月28日
原告 加藤妙子 外二名
被告 金岡克治 外一名
主文
被告らは各自、原告加藤妙子に対し金一五万円、原告加藤充および原告加藤芳恵に対し各金二万円、およびこれらに対する昭和三六年四月一日から右各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
原告らのその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを五分し、その三を原告らの、その二を被告らの各負担とする。
この判決は原告ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は、「被告らは各自、原告加藤妙子に対し金三〇万円、原告加藤充および原告加藤芳恵に対し各金一〇万円、およびこれらに対する本訴状送達の日の翌月から右完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」旨の判決および仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、
一、原告妙子は昭和二七年八月三一日生れの少女であり、原告充はその父、原告芳恵はその母にして、他に五人の子女を有し、いずれも大工職を営む原告充の収入(一日約金一、〇〇〇円)によつて生計を営んでいるものであり、被告克己は肩書地において春光園なる商号の下に阪神一の規模を以て園芸業を営み私財一億円を有すると称せられており、被告克治は右克己の子にして同人の被用者として植木等の自動車による運搬配達の業務に従事しているものである。
二、被告克治は昭和三五年五月二八日小型四輪貨物自動車(兵四な七二一九号)を、その助手台に被告克己を同乗させて運転し顧客先に植木を運搬配達中、午後一時五五分頃池田市西本町二七七一番地先路上を交通信号機のある交差点において右自動車右側荷台前角付近を原告妙子に接触転倒させる事故を起し、右事故によつて右原告は同年七月七日まで入院加療を要する外、将来外傷性てんかんを起す可能性のある左側頭部挫創兼頭蓋骨折の傷害を負つた。そして同人は退院後も担当医師から当分の間、日光の直射を受けないこと、身体の安静を守ること、大声を発しないこと、通学入浴をしないこと等の遵守事項を申し渡され治療した結果外見上は一応治癒したかに見えたので登校したところその後も日光の直射を受けて発熱したり入浴中卒倒したりなどしている。
三、しかして右事故は被告克治の過失によつて惹起されたものである。即ち、同被告は前記交差点に向けて北進し、右交差点を左折西進しようとしたのであるが、この時交差点左側即ち東西の信号は赤であり且つ右交差点の自己の車の右斜前方七・七五メートルに原告妙子が信号に従つて北より南に向け横断通行中であるのを認めたのであるから、このような場合自動車運転者たる者は交差点手前で一旦停車または最徐行するは勿論前方を横断通行中の歩行者の動静を注視し接触しないように運転する業務上の注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、交差点手前で一且停車または最徐行せず且つ右原告を認めながらその前を通過できると軽信しその動静を注視せず漫然時速三〇キロメートルで左折しようとした過失により、同人に約四・五五メートル接近した際、同人が小走りに南に向け走り出したので直ちに急停車の措置を執つたが及ばなかつたものである。そこで被告克治は不法行為者として、被告克己はその使用者として右事故によつて利益を侵害された者に対しその蒙つた損害を賠償する義務がある。
四、原告らは被告克治の右不法行為によつて次の苦痛を受けた。
1 原告妙子は被害者として前記身体傷害から生ずる直接のまた将来外傷性てんかんを惹起するかも判らないことを危惧する各精神的苦痛
2 原告充および同芳恵は、原告妙子の親権者として同人の受傷、加療中の看護および同人が将来前記てんかんを惹起するかも判らないことを危惧することによる各精神的苦痛
五、よつて原告らは、原被告双方の資産、生活状態等諸般の事情を考慮したうえ、被告らに対して右精神的苦痛に対する損害の賠償として、原告妙子において金三〇万円、原告充および同芳恵においていずれも金一〇万円の慰藉料、およびこれに対する本訴状送達の日の翌月から右完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
と述べ、
被告らの抗弁に対する答弁として、
1 同一の事実は否認する。
2 同二の事実中、被告らが入院中の治療費を負担したことは認めるが、その余は争う。退院後はその後の治療費すら負担しないし何らの誠意をも示さない。
と述べた。(証拠省略)
被告ら訴訟代理人は、「原告らの請求はいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」旨の判決を求め、答弁として、
1 原告らの請求原因一の事実中、原告らの生活程度は不知、被告克己が阪神一の園芸業者で私財一億を有するとの点は否認し、その余は認める。
2 同二の事実中、被告克治が昭和三五年五月二八日小型四輪貨物自動車をその助手台に被告克己を同乗させたうえ運転し顧客先に植木を運搬配達中、池田市西本町二七七一番地先路上で原告妙子と接触し交通事故を起したこと、同人が右事故で同年七月七日まで入院加療したことは認めるが、その余は争う。
3 同三の事実は争う。被告克治は本件交差点の手前約三〇メートルの地点で前方信号機の青の点滅を認めエンヂンを停止し惰力運転で左折しようとしたのであるが、その時原告妙子は交差点北側店舗前歩道上において東方を向いていたので、同人は南に横断しないものと考え、また仮に横断歩行を始めたとしても十分左折できるものと判断して左折し、その体位で前方を注視し惰力運転を続けていたところ、俄に同人が前方を注視することなく前かがみの姿勢で横断歩道外を南に向つて走り出し、自ら右被告運転の自動車の荷台後部に突き当つたものである。しかして凡そ自動車運転者たる者は交差点において進行方向の信号が青であれば適当に速度を落しそのまま左折し左折後の進行方向を注視運転すべきものであり、一方横断歩行者たるものは一旦歩道の一端に立ち止つた以上はその後の行動については十分安全度を確めて行動すべきものであるから、被告克治には右事故に関しては何らの過失もなく、右は一に被害者側の過失によるものである。
4 同四の事実は知らない。
と述べ、なお仮に被告らに慰藉料支払の義務があるとしても、原告妙子に対し慰藉料を支払えば他の原告らにも慰藉したことになるのであるから、原告妙子に対する支払を以て足り、他の原告らに対しては支払の義務はない、旨付陳し、
抗弁として、
一、仮に、被告らにおいて原告妙子に対し慰藉料支払の義務があるとしても、同人には前記のとおり過失があり、年少者とはいえ既に注意能力を有する者であるから慰藉料額算定に当つてはこれを斟酌すべきであり、また仮に同人に右能力がないとすればこのような者を独り歩きさせた親権者の過失として同様に慰藉料額算定につき斟酌すべきである。
二、しかして被告らは本件事故後直ちに原告妙子に対し応急措置をなし入院させる等して万全の措置をとりその間一切の費用を支払い、退院後も通院費等を負担する外、事故と同時に見舞金として現金三、〇〇〇円を、入院中は二、三日に一回金三〇〇円から四〇〇円程度で合計約金四、〇〇〇円の見舞品を、退院後も数回に亘り合計約金二、五〇〇円の見舞品をそれぞれ贈り慰藉の方法を尽しているのであつて、既に慰藉料支払の義務はない。
と述べた。(証拠省略)
理由
(双方の身分関係、資産および生活程度等)
一、原告妙子が昭和二七年八月三一日生れの少女であり、原告充はその父、原告芳恵はその母にして他に五人の子女を有していること、および被告克己が肩書地において春光園なる商号の下に園芸業を営み、被告克治は、右克己の子にして同人の被用者として植木等の自動車による運搬配達の業務に従事しているものであることはいずれも当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第三号証、同第四号証の九および原告充本人尋問の結果によると、原告充は大工を職業とし主としてその収入(一日金一、六〇〇円、但し本件事故当時は一日金七〇〇円)によつて原告らを含む家族が生計を営んでいる事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。しかしながら被告克己経営の園芸業が阪神一の規模でありその私財が一億円に達しているとの原告ら主張事実はこれを認めるに足る証拠がない。
(傷害の発生)
二、被告克治が昭和三五年五月二八日小型四輪貨物自動車をその助手台に被告克己を同乗させて運転し顧客先に植木を運搬配達中、池田市西本町二七七一番地先路上で原告妙子と接触し交通事故を起したこと、および同人が右事故で同年七月七日まで入院加療したことはいずれも当事者間に争いがなく、証人岡本智量の証言、原告充本人尋問の結果および右証言によつて真正に成立したものと認めることができる甲第二号証によると、原告妙子は右事故によつて左側頭部挫創兼頭蓋骨折、右膝関節擦過傷等の傷害を負い、前記のとおり同年七月七日まで池田市立池田病院に入院したが、その退院に当つて担当医師訴外岡本智量から当分通院して診療を受けその間通学、運動、入浴および直射日光を受けること等を禁止されたこと、そして同年九月一六日まで右通院加療を続け一応の治癒をみたので同月末日から通学中のところ、同年八月末頃日光の直射を受けて突如高熱を出し、また昭和三六年一月頃入浴中卒倒したりなどしていること、および右退院時右岡本医師より後遺症として将来外傷性てんかんを起す可能性がある旨告げられたこと等の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。ところで原告らは右傷害によつて原告妙子は将来外傷性てんかんを惹起する虞れがある旨主張するのであるが、右岡本証人の証言によると、外傷性てんかんは脳の被膜に斑痕のあることが顕著な徴候とされているけれども原告妙子については右斑痕は認められなかつたこと、同人は受傷時意識明瞭、脈搏正常、緊張良好で頭蓋内出血もなかつたこと右証人の経験からすると後日外傷性てんかんを起した事例は本件に比べてはるかに重症で頭蓋内出血を伴う意識混濁が四、五日も続いた場合であつたこと、てんかんは発熱はないから前記高発熱はてんかんとは関係がないこと、ただ右証人は本件が頭部の外傷であるところから一応の可能性として原告ら主張の前記診断をしたものであること等の事実を認めることができ、更に右証言に加えて原告充本人尋問の結果によると、原告妙子は昭和三六年六月一二日大阪大学医学部付属石橋病院でレントゲン検査の結果後遺症は認められないとの診断を受けている事実が明らかであつて、これらの事実に、弁論の全趣旨によつて認められる本件口頭弁論終結時まで、即ち受傷後約二年六ヵ月を経過するも、右原告は未だ外傷性てんかんの発作を起していない事実を伴せ考えるとき、右原告はもはや後遺症として外傷性てんかん発病の危惧は殆んどないものと認めることができるのであつて、右認定を左右する証拠の存しない本件においては右原告らの主張は到底認め難い。
(被告らの責任の有無)
三、成立に争いのない甲第四号証の六、八、一〇および検証の結果によると、被告克治は前記自動車を運転し前記交差点に向け時速三〇キロメートルを以て二級国道大阪、福知山線を北進し右交差点にさしかかり、ここで左折西進しようとしたのであるが、その時前方信号機の標示は青であり、停止線付近においては既に青の点滅となつていたため、一旦停車または最徐行することなくそのままの速度で右交差点を左折した。そして右左折直後即ち南北の横断歩道上付近に至つたとき約八メートル斜右前方において右正規の横断歩道より西寄りの通常横断歩道として使用されている部分(被告克治も右部分を正規の横断歩道と誤信していた。)を原告妙子が北から南え横断歩行中ほぼ道路の中央部付近で立止つているのを認めたのであるが、同人の位置からしてその前を通過できるものと判断し、そのままの速度でその前を通り抜けようとしたところ、更に同人と近接した際俄に同人が小走りに南に向け走り出したので、直ちに急停車の措置を執つたが間に合わず前記認定の事故を起した事実を認めることができる。そして検証の結果および被告克治本人尋問の結果中右認定に反する部分(即ち、後記被告ら主張事実に符合する部分)は後記理由によつて信用することができず、他に右認定に反する証拠はない。しかして被告らは右事故は被害者側の過失によつて生じたものであるとして大要次の事実を主張している。即ち、被告克治は本件交差点に入るに当り惰力運転していたこと、原告妙子はその時交差点北側の店舗前歩道上に立つていたこと、右被告が左折しやや進行したとき、右原告は俄に前方を注視することなく路上を疾走横断し自ら右被告運転の自動車荷台に突き当つたこと。そして右事実に副う証拠のあることは前記のとおりである。しかしながら、右事実中、まず自動車の速度の点は前記甲第四号証の六、検証の結果および被告克治本人尋問の結果によつて認められる急ブレーキ後停車までの距離から考えて到底信用できず、また原告妙子が道路の北側から本件自動車に向つて疾走衝突したとの点は、右各証拠によつて認められる急ブレーキ後停車までの本件自動車の走行距離、同所要時間、道路北側から本件衝突地点までの距離等に、経験則上認められる右原告の走行速度を伴せ考えるとき、たやすくこれを認めることができない。
ところで以上認定の事実から考えると、被告克治は本件交差点を左折するに当り自動車運転者としてその進路に当る横断歩道を自車に優先して通行すべき歩行者の安全に備えて徐行する等万全の注意を以て運転する外、更に左折した直後約八メートル先において正規の横断歩道ではないがそれより僅か西寄りで通常横断歩道として使用されている部分を北から南に向けて横断中道路中央部付近で立ち止つている原告妙子を認めたのであるから、このような場合同人は少女でもありどのような挙動に出るかも測り知れないので直ちに一旦停車するか少くとも最徐行して同人の動静に注意して運転する等の注意義務があるものというべきところ、同被告は右運転に当り右注意義務を怠つていたことは明らかであるから、本件事故は同被告の過失によつて生じたものと認めざるを得ない。従つて被告克治は右事故によつて他人の利益を侵害し、よつて生ぜしめた損害についてはその賠償義務は免れない。
次に被告克己が被告克治の使用者であり、本件事故が右克己の事業のため右克治において自動車を運転中惹起されたものであることは前記第一、第二項記載のとおりいずれも当事者間に争いないところであるから、被告克己もまた同克治の過失によつて他人の利益を侵害し、よつて生ぜしめた損害についてはその賠償義務あるものというべきである。
(原告らの慰藉料請求権の有無)
四、原告妙子は本件事故当時七年八月の少女ではあつたが右事故に基く傷害によつて相当の驚愕と肉体的苦痛を受けたであろうこと、そして相当期間入院したうえ自宅においても療養生活を余儀なくされ不自由な生活を送り且つ学校も長期に亘り欠席のやむなきに至つたことはいずれも前記第一、第二項で認定の事実からして明らかであるから、同原告は被告らに対しその蒙つた肉体上および精神上の苦痛につき慰藉料の請求をなし得るものであることはいうまでもない。
次に、原告充および同芳恵は原告妙子の親権者として本件事故によりかなりの衝撃を受けたであろうことは前記第一、第二項で認定の事実から容易に推測できるところであるが、なお原告充本人尋問の結果によると、右充および芳恵は妙子の入院中は固より退院後通院中もこもごも看病に心を砕き、且つ傷害の部位が頭部であるため同人の将来について深刻な不安と危惧を抱いているものと認めることができるのであつて、親権者としての苦痛はかなり強度のものであり、社会通念上慰藉料の支払を受けるのを相当とする程度に重大であつたものと認めることができるから、右充および芳恵らも被告らに対し慰藉料の請求をなし得るものといわねばならない。被告らは、原告充および同芳恵は自ら慰藉料の請求をなし得ない旨主張しており、民法第七一一条の反対解釈から被告ら主張の結論を支持する見解もあるのであるが、右法条は生命侵害以外の場合どのような事情があつてもその近親者の慰藉料請求権をすべて否定しているものと解すべきでなく(最高裁昭和三三・八・五第三小法廷判決、民集一二巻一二号一九〇一ページ)たとえ身体傷害に止まる場合であつても、その近親者の受けた精神上の苦痛が社会通念上慰藉料の支払を受けるのを相当とする程度に重大なものであれば、右近親者において民法第七〇九条第七一〇条によつて精神上の苦痛に対し慰藉料の請求をなし得るものと解すべきであるから、被告らの右主張は採用できない。
(原告らの過失の有無)
五、被告らは仮定的に過失相殺を主張し、まず被害者である原告妙子の過失を主張するので考えるに、前項認定のとおり同人は本件事故当時満七年八月の少女にすぎなかつたものであるから、知能の発育状態が特に優れていたものであれば格別、原告充本人尋問の結果および弁論の全趣旨によると、右妙子の学校における成績は良好とはいえず、従つて知能の発育も前記状態にあつたものとは認め難いから結局同人には損害の発生を避けるに必要な注意能力が未だ備つていなかつたものというべく、同人に対し過失の責を負わすことはできない。
次に、被告らは原告妙子の監督義務者である親権者原告充および同芳恵らの過失を主張するので考えるに、成立に争いのない甲第四号証の九によると、原告妙子はその頃目を痛め下校後右交差点を横断して眼科医に治療のため通院していたものであつて、本件事故も当日右通院の途上において起つた事実を認めることができるうえ、検証の結果によると、本件交差点は二級国道大阪・福知山線から宝塚方面えの分岐点に当り車馬の往来もかなり激しい地点であることが明らかであるから、本件原告妙子のような眼の悪い少女を交通頻繁な交差点を横断して眼科医に通院させるに当つては、その親権者たるものは自ら同行するか、もしくは適当な付添人を同行させるかして危険の発生を未然に防止できるよう適切な措置を講ずべき監督上の義務があるものというべきところ、原告充および同芳恵らにおいてこのような措置を執つたものと認めるに足る証拠がないから、同人らの過失は免れない。
(見舞金品授受等の事実の有無)
六、被告らは更に抗弁として、被告らは既に原告らに対しては治療費等一切を負担する外、見舞金品等を贈るなどして慰藉の方法を尽しているので、もはや慰藉料支払の義務はない旨主張するので考えるに、まず被告らが原告妙子の入院中の治療費を負担したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第四号証の五、八ないし九、被告克治本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認めることができる乙号各証および原告充、被告克治各本人尋問の結果によると、被告克治は本件事故発生後直ちに原告妙子に対し応急措置をなし入院させる等万全の処置を執つたこと、被告らはその間の一切の費用および退院後の通院費の一部を支払い、見舞品として合計してほぼ被告ら主張の金員(金六、五〇〇円)に相当する品物を贈つている事実を認めることができるが、被告ら主張のその余の事実についてはこれを認めるに足る証拠がない。ところで右認定の事実について考えると、右はいずれも原告らに対する慰藉料額算定の事情として斟酌さるべき性質のものにすぎないから、この点に関する被告らの主張は採用の限りでない。
(慰藉料)
七、以上、諸般の事情、特に原告充および同芳恵の過失については被害者側の過失としてこれを原告ら全員について斟酌のうえ、被告らの原告妙子に対する慰藉料は金一五万円、同充および同芳恵に対する慰藉料は各金二万円を以て相当と認める。
(結論)
八、そうだとすると、被告らは各自、原告らに対し各右認定の慰藉料とこれに対する本件不法行為の日の後であり本訴状送達の日の翌月であることが記録上明らかな昭和三六年四月一日から右完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務あることが明らかであるから、原告らの請求は右限度においては正当として認容し、その余は失当として棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 高田政彦)